どうも、現場寄りのおじさんです。真空装置を使っていると、ときどきこんなことがあります。
「昨日まで出ていた圧力まで下がらない」
「ポンプは普通に動いているのに、真空計の数字だけがおかしい」
「別の真空計と比べると、値が合わない」
こうなると、まず「どこか漏れているのでは?」と考えたくなります。
もちろん真空漏れが原因のこともあります。ただ、実際には真空計そのものや、真空計の取り付け方・使用条件が原因になっていることもあります。
真空計は、ただ圧力を数字で表示しているだけに見えますが、測定方式によってクセがあります。汚れやガスの種類、取り付け位置によっても、表示値が変わることがあります。
今回は「真空計の値がおかしい」と感じたときに、どこから確認すればよいのかを現場目線で順番に整理します。
まず確認したい:「本当に装置の真空が悪いのか?」
最初に確認したいのは、真空計の表示が悪いのか、それとも本当に装置の圧力が悪いのかです。
ここを分けずに進めると、まだ使えるポンプを交換したり、問題のないOリングを何度も交換したりすることがあります。
まずは次のような点を確認します。
- 以前と同じ運転条件になっているか
- 大気開放やメンテナンスの直後ではないか
- 真空計を交換・取り外ししていないか
- 使用しているガスが以前と変わっていないか
- 別の真空計や装置側の挙動と比べてもおかしいか
「圧力表示だけがおかしい」のか、「排気時間や装置の動作も変わっている」のかで、見る方向が変わります。
確認①:真空計の種類を確認する
ひとことで真空計と言っても、すべて同じ仕組みで測っているわけではありません。
現場でよく使われるものには、たとえば次のような方式があります。
- Pirani真空計(熱伝導式)
- 静電容量式真空計(キャパシタンスマノメータ)
- 冷陰極真空計
- 熱陰極電離真空計
- 複数方式を組み合わせたコンビネーションゲージ
ここで大事なのは、測定方式によって「何の影響を受けやすいか」が違うことです。
たとえばPirani真空計は、気体の熱伝導を利用して圧力を求めるため、ガスの種類によって表示値が変わります。
一方、ダイヤフラムの変位を利用する静電容量式真空計は、原理上はガス種の影響を受けにくい方式です。
「同じ圧力なら、どの真空計でも同じ数字になるはず」と考えると、少し話がややこしくなることがあります。
確認②:使っているガスが変わっていないか
Pirani真空計など、ガスの物性を利用して圧力を測る方式では、ガス種による影響があります。
たとえば、これまで空気や窒素を排気していた装置で、別のガスを使うようになった場合です。
- 装置のプロセスガスを変更した
- N2パージ条件を変更した
- ガス導入量を変更した
- プロセス生成物が増えた
こうした変更の後に表示値が変わった場合は、真空計の故障だけを疑うのではなく、ガス条件も確認した方がよいです。
真空計によってはガス補正係数を設定できるものもありますので、使用している真空計の取扱説明書を確認します。
確認③:センサが汚れていないか
個人的には、ここはかなり大事だと思っています。
真空計のセンサはチャンバーや配管につながっているので、当然ながら装置内のガスや蒸気、微粒子の影響を受けます。
装置の用途によっては、長期間使っているうちにセンサ内部へ汚れが付着します。
- 油蒸気
- プロセス生成物
- 粉体や微粒子
- 蒸着物
- 水分や凝縮物
汚れ方によっては、真空計が完全に故障していなくても、以前とは違う値を示したり、表示が不安定になったりすることがあります。
「壊れていないから大丈夫」ではなく、センサの状態が変わっていないかも見た方がいいです。
特に、バックストリーミングや成膜・蒸着を扱う装置では、真空計の取り付け位置も含めて確認します。

確認④:真空計の取り付け位置を見る
真空計の値を見るときに意外と見落とされるのが、どこに取り付けられているかです。
たとえば、
- チャンバー本体に付いている
- ポンプのすぐ近くに付いている
- 細い配管の先に付いている
- バルブの前後に付いている
この違いだけでも、運転中の表示値に差が出ることがあります。
ガスが流れている状態では、チャンバーとポンプの間に圧力差が生じることがあります。
ですので、ポンプの近くにある真空計の値だけを見て「チャンバーも同じ圧力になっている」とは限りません。
また、真空計までの配管が細く長い場合、真空計側の圧力変化が装置本体より遅れて見えることもあります。
「昔からここに付いているから正しい」ではなく、何の圧力を測りたいのかを考えて位置を見ることが大切です。
確認⑤:取付姿勢や周囲環境も確認する
真空計によっては、取り付け姿勢や周囲環境についてメーカーから指定があります。
特に気をつけたいのは、センサ内部に汚れや異物が入りやすい取り付け方です。
- 凝縮物がセンサ側へ流れ込まないか
- 粉や加工くずが落ち込まないか
- 強い振動が加わっていないか
- 高温部の近くに設置されていないか
熱伝導式の真空計では、周囲温度の影響も無視できない場合があります。
装置改造の際に「空いているポートへ真空計を移した」だけで、以前と測定条件が変わってしまうこともあります。
真空計を移設した直後から値がおかしくなった場合は、このあたりも確認します。
確認⑥:ゼロ点・調整・校正履歴を確認する
真空計は長く使えば、いつまでも新品時とまったく同じ状態とは限りません。
機種によってはゼロ点調整や大気側の調整が必要なものがありますし、用途によっては定期的な校正が必要になります。
- 最後に調整したのはいつか
- 校正履歴が残っているか
- センサ交換後に必要な設定をしたか
- コントローラ側の設定が変わっていないか
ここは機種によって方法が違います。
自己判断で調整値を変更する前に、必ずメーカーの取扱説明書を確認してください。
むやみに調整すると、元の状態が分からなくなることがあります。
確認⑦:別の真空計と比較する
原因を切り分けるうえで分かりやすいのが、別の真空計との比較です。
可能であれば、正常と分かっている真空計を同じ系統につないで比較します。
ただし、ここでも注意があります。
測定方式が違う真空計を比較する場合、測定範囲やガス種依存性、取付位置が違えば、数字が完全に一致しないことがあります。
ですので、単純に
「数字が違うから、どちらかが壊れている」
とは判断しません。
同じ条件で繰り返し比較し、どの圧力領域から差が出るのかを見ると切り分けやすくなります。
確認⑧:真空計ではなく、装置側の問題も見る
真空計を一通り確認して問題がなさそうなら、装置側へ戻ります。
- 真空漏れ
- アウトガス
- 仮想リーク
- ポンプ性能の低下
- 配管コンダクタンス不足
- バルブの内部リーク
特に「真空計の数字がおかしい」と思っていたけれど、実際には本当に装置側の圧力が悪化していた、というケースもあります。
真空計だけを疑い続けず、測定側と装置側を行ったり来たりしながら切り分けるのが現実的です。
こんな場合は真空計の交換を考える前に確認を
次のような場合は、すぐ新品へ交換する前に一度整理してみてください。
- メンテナンス直後から値が変わった
- 真空計の取付位置を変更した
- 使用するガスを変更した
- 装置内の汚れが増えている
- 複数の真空計で値が違う
交換して直れば分かりやすいのですが、取り付け条件や装置側に原因がある場合は、新しい真空計へ交換しても同じ症状になることがあります。
交換前に原因を一度整理しておく方が、結果的に遠回りを避けやすくなります。

現場で確認するときの順番
「何から見ればいいか分からない」という場合は、ざっくり次の順番で確認します。
- 以前と運転条件が変わっていないか確認する
- 真空計の種類と測定範囲を確認する
- ガス種やプロセス条件の変更を確認する
- センサ汚れ・取付位置・取付姿勢を見る
- 調整・校正・設定履歴を確認する
- 可能なら別の真空計と比較する
- 問題がなければ装置側のリーク・ポンプ・配管を確認する
いきなり「真空計が壊れた」と決めつけないのがポイントです。
関連する真空トラブル記事
真空計だけでは原因が分からない場合は、次の記事もあわせて確認すると切り分けしやすくなります。
- 真空漏れの確認方法まとめ|現場で使えるチェック手順
- リークテストで異常なし…それでも真空が安定しない原因とは?
- ポンプを替える前に配管を見て!真空コンダクタンスで排気が遅い理由と改善ポイント
- 真空ポンプを交換しても改善しない?見落とされがちな原因と判断ポイント
ヒロテックでは真空計だけでなく、装置全体から切り分けます
ヒロテックでは、「真空計がおかしい」という相談でも、真空計だけを見るとは限りません。
- 真空計の種類と状態
- 取付位置
- チャンバーや配管構成
- 使用しているポンプ
- 運転条件や過去の変更履歴
このあたりを一緒に見ながら、表示がおかしいのか、実際に真空性能が悪化しているのかを整理していきます。
原因が分からない状態で部品を順番に交換していくより、最初に切り分けた方が早いケースもあります。
型式や原因が分からない段階でも大丈夫です
「真空計の型式がよく分からない」
「真空計が悪いのか装置が悪いのか分からない」
「古い装置で資料が残っていない」
そんな段階でも問題ありません。
- 真空計の写真だけでもOK
- 装置全体の写真だけでもOK
- 図面なしでもOK
- 原因がまだ分からなくてもOK
表示値、真空計の型式、装置構成、症状が出始めた時期など、分かる情報から整理していきます。
真空計がおかしいのか、装置がおかしいのか。分からない段階でも一度ご相談ください。
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