異種金属の真空接合に強くなる!設計と溶接のコツ

こんにちは。今回は「真空装置における異種金属の接合」について、現場の設計者や製造担当の方が気になるポイントを中心に、やさしい口調でご紹介していきます。

最近は、半導体装置や医療、エネルギー関連などの分野で、装置がどんどんコンパクトに、かつ高機能になってきていますよね。その影響で、「この部品、別の素材にできない?」とか「軽くしたいけど、強度も保ちたい」といった要望が増え、異なる金属を組み合わせるケースも多くなってきています。

ただ、異材の接合って、正直言ってなかなか難しい。膨張の度合いが違ったり、溶接できない組み合わせだったり、接合後に歪みや漏れが出たり…。そんなお悩みを解消できるように、実際の現場での経験も交えながら、ノウハウを共有していきます。


なぜ異種金属の接合が増えているのか?

装置の設計って、どこかで「一つの材料じゃ無理かもな…」ってなる場面、ありませんか?

  • アルミで軽くしたいけど、接続部は強度のあるSUSにしたい
  • 耐薬品性を上げるためにチタンを使いたいけど、母材はステンレスでいきたい
  • 熱を逃がすために一部だけ銅にしたい

こんなふうに、性能・コスト・重量・熱対策などをバランスよく解決するために、異種金属の接合が必要になってくるんですね。


異種金属接合って何がそんなに難しいの?

実際に異種金属を接合する場面になると、「思ったより大変だな」と感じることが多いです。

1. 熱のふるまいが違う

アルミとステンレスなど、金属によって熱膨張の度合いが違います。そのため、加熱時や冷却時に歪みが出やすく、応力が集中しやすくなります。

2. 溶接の相性問題

同じ金属同士なら問題ないけど、アルミとSUSのような組み合わせは、直接溶接ができません。中間材や別の方法を組み合わせる必要があるんです。

3. 腐食のリスク

異なる金属を接合すると、環境によっては「ガルバニック腐食(電位差による腐食)」が起きることも。真空中はそこまで心配しなくてもいいですが、保管や洗浄工程では注意が必要です。

4. 真空だとリークが命取り

真空装置では、少しの隙間も許されません。異種金属接合部はリークしやすくなるので、高い気密性が確保できる接合方法が求められます。


よくある組み合わせと特徴まとめ

SUS304 × アルミ

  • 軽量と耐久性を両立したいときに登場。
  • 直接の溶接は不可。爆着材やニッケルなどを間に挟む方法が多いです。

チタン × ステンレス

  • 耐薬品性が求められる環境で使われます。
  • TIG溶接や電子ビーム溶接(EBW)で、意外と相性はいい。

銅 × アルミ

  • 放熱プレートなどでよく使われる組み合わせ。
  • ろう付け(ブレージング)で接合することが多いですね。

異材をつなぐ方法はいろいろあります

爆着(爆発接合)

一瞬で高い圧力をかけて、違う金属を圧接します。アルミとSUSのように直接溶接できない素材に向いています。

拡散接合(ディフュージョンボンディング)

真空中で高温・高圧をかけて、金属の原子同士をくっつける方法。見た目も境界がないほど一体化しますが、専用設備が必要です。

中間金属+TIG溶接

アルミとSUSの間にニッケルを挟むなど、材質を「橋渡し」して溶接する方法。TIGで仕上げられるので、精密用途にも適しています。

ろう付け(ブレージング)

銀や銅などの「ろう材」を使って、異種金属を加熱してつなぐ方法。精密加工と相性が良く、ひずみも少なめです。


真空装置で気をつけたいことと対策

リークが出る

応力集中や材料の反りによって隙間ができやすいです。
対策:構造解析(CAE)で歪みを予測、ヘリウムリークテストで漏れ確認。

接合が弱い

使い方によっては接合強度が足りないことも。
対策:ろう付け+機械固定(ネジ止め)など、ハイブリッド構造も活用。

腐食が進行

保管環境や洗浄後の水分が残っていると、異種界面で腐食が出ることも。
対策:材料選定、絶縁層、表面処理の活用。


当社でできることと実績

  • 組み合わせ実績:SUS304-アルミ、SUS316-チタン、アルミ-銅など
  • 加工内容:爆着材の受け入れ〜溶接・検査まで一貫対応
  • サイズ目安:Φ30〜600mm、長さ〜800mm程度
  • 検査設備:HELIOTシリーズで全数リーク検査に対応

図面や仕様が固まっていなくても「こんな接合できる?」という段階からご相談OKです。


まとめ:異種金属の接合は、工夫と段取りで決まる!

異種金属の接合って、たしかに難しい。でも、工夫しだいで設計自由度も機能性もぐっと広がる、面白い分野です。

成功のカギは、「段取り」と「情報共有」。

  • 材料の相性を事前にチェック
  • 最適な接合方法を選ぶ
  • 加工順や治具の工夫も大事

設計・加工・検査まで、全部一緒に考えられる体制があると、安心して進められます。

「これ、異材だけど大丈夫かな?」と思ったら、ぜひ一度ご相談ください!
試作、小ロット、改造なども柔軟に対応しています。

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