どうも、現場寄りのおじさんです。真空装置のトラブル相談で、けっこう多いのがこのパターンです。
「リークテストでは異常なしと言われた」
「でも、なぜか到達圧が安定しない」
「時間が経つと、じわじわ真空度が悪くなる」
これ、現場ではわりとあります。
一見すると「リークテストで問題ないなら、漏れはないんでしょ?」と思いたくなるのですが、真空装置の場合はそう単純ではありません。
“リークが見つからない”ことと、“真空系に問題がない”ことは、必ずしも同じではないんです。
実際には、通常のリークテストだけでは見えにくい原因が隠れていて、それが真空の不安定さにつながっていることがあります。
この記事では、リークテストでは異常なしだったのに真空が安定しないとき、現場でよく疑うポイントを整理してみます。
まず知っておきたい:「漏れ」と「真空不良」は別の場合がある
真空が悪いと聞くと、まず考えるのは「どこかから空気を吸っているのでは?」ということだと思います。
もちろん、本当に漏れているケースもあります。
ただ、実際の現場では、漏れではないのに真空が安定しないケースもあります。
- リークではなく、材料や汚れからガスが出ている
- 仮想リークが起きている
- ポンプ側の性能や状態が落ちている
- 配管やバルブの構成で排気しにくくなっている
- 組付け状態や加熱条件によって変化している
つまり、単純に「漏れているかどうか」だけを見ていると、原因にたどり着けないことがあります。
ここを分けて考えられるかどうかで、その後の対応がかなり変わります。
原因①:仮想リーク(バーチャルリーク)
まず、疑うことが多いのが仮想リークです。
仮想リークというと少し分かりにくいですが、ざっくり言うと、
外から空気が入っているわけではないのに、装置の内部に残ったガスがゆっくり出続けている状態
です。
見た目には漏れていない。リークディテクタでも大きな反応はない。でも、排気しているのに圧力が思うように下がらない。そんなときに疑うポイントです。
よくある発生箇所
- ネジ穴の奥が袋状になっている部分
- 部品同士が重なっている隙間
- 溶接部の内部にできた空間
- 配管のデッドスペース
- 長期間分解されていない箇所
特に「最初は悪いけど、時間をかけると少しずつ良くなる」という場合は、仮想リークや内部ガスの影響を見ておいた方がよいです。

原因②:材料からのガス放出(アウトガス)
次に多いのが、材料や汚れから出てくるガスです。
これはリークとは少し違います。外から空気が入っているのではなく、装置の中にある部品や表面からガスが出ている状態です。
特に、次のようなものが入っている場合は注意が必要です。
- 樹脂部品
- 接着剤
- 油分
- 洗浄不足の部品
- 水分を含んだ部材や表面
真空装置は、ちょっとした水分や油分でも影響が出ることがあります。
リークではなくても、内部からガスが出続ければ、当然ながら真空は安定しません。
こんな症状は要注意
- 排気開始直後だけ極端に悪い
- ベーキングすると改善する
- 湿度の高い日や雨の日に不安定になりやすい
- 内部清掃後に改善したことがある
大気開放後や、長期間停止した後の立ち上げで悪くなる場合も、このパターンはよくあります。
原因③:ポンプ性能の低下
真空漏れを疑って調べていたら、実はポンプ側の問題だった、ということもあります。
ポンプは動いていれば大丈夫、と思いがちですが、動いていることと、本来の性能が出ていることは別です。
よくある例
- ポンプ油の劣化
- 内部摩耗
- 排気能力の低下
- 逆止弁の不良
- 配管やフィルタの詰まり
ただし、ここで難しいのが、ポンプを交換すれば必ず直るわけではないという点です。
ポンプ交換で改善するケースもあれば、交換してもほとんど変わらないケースもあります。
ポンプ単体だけで判断するのではなく、装置側の構造や配管、運転条件とセットで見る必要があります。
原因④:シール面やフランジの微細な問題
リークテストでは大きな問題が出ていなくても、シール面やフランジまわりに微妙な問題があるケースもあります。
- シール面の細かい傷
- 締め付けのムラ
- 熱による変形
- 面粗度の問題
- Oリングのつぶれ方が均一でない
特に注意したいのは、運転条件によって状態が変わるケースです。
常温では問題ないのに、加熱したときだけ悪くなる。あるいは、何度か運転を繰り返すと悪化する。こういう場合は、熱の影響や組付け状態まで含めて見る必要があります。

原因⑤:測定条件そのものが合っていない
意外と見落とされるのが、リークテストの条件そのものです。
「異常なし」という結果が出ていても、その確認範囲や条件によっては、見えていない部分が残っていることがあります。
- 測定箇所が限定されている
- 装置全体を確認できていない
- テスト圧力や状態が実運転と違う
- 必要な感度が足りていない
- 配管構成の影響を受けている
大型装置や配管が複雑な装置では、見る順番や測定条件を変えるだけで、原因に近づけることもあります。
「リークテスト済みだから大丈夫」と決めつけず、どの条件で、どの範囲を見たのかを確認することが大切です。
実際によくある相談パターン
ヒロテックでも、次のようなご相談をいただくことがあります。
- リークテストでは正常なのに真空が安定しない
- 時間が経つと圧力が悪化する
- ベーキングすると改善する
- 装置停止後の再立ち上げで悪くなる
- ポンプ交換をしたが改善しない
こうしたケースでは、単純に「漏れを探す」だけではなく、装置全体の状態を順番に整理していく必要があります。
「原因不明」のまま進めないことが大事です
現場では、原因がはっきりしないまま、
- Oリング交換
- 増し締め
- ポンプ交換
- 配管交換
を繰り返してしまうことがあります。
もちろん、それで改善する場合もあります。
ただ、何度やっても変わらない場合は、いったん立ち止まった方がいいです。
「本当に漏れなのか?」を整理することが、遠回りに見えて、実は一番早いこともあります。
関連する真空トラブル記事
真空が安定しない場合は、次の記事も順に確認すると原因整理しやすくなります。
ヒロテックでは“原因整理”から対応しています
ヒロテックでは、いきなり「ここを交換しましょう」「作り直しましょう」という話から始めるのではなく、まずは状況整理を大切にしています。
- 装置構造
- 配管構成
- 運転条件
- 過去の修理・改修履歴
- 症状の再発性
こういった情報を確認しながら、原因をひとつずつ切り分けていきます。
見るべきなのは、単に「リークがあるかどうか」だけではありません。
「なぜ真空が安定しないのか?」
ここを整理することが重要です。
図面が無くても、まずは状況整理から可能です
「原因不明と言われた」
「リークテストでは問題なしだった」
「どこから見直せばいいか分からない」
そういう段階でも大丈夫です。
- 図面なしでもOK
- 古い装置でもOK
- 他社で改善しなかった案件でもOK
まず状況を整理するだけでも、次に見るべきポイントが分かることがあります。
リークテストで異常なし。でも真空が安定しない。
そんなときは、一度状況を整理してみませんか?



































